2013年7月2日火曜日

コアジサシ Sterna albifrons

 夏鳥として本州以南に渡来する。神奈川県では、3月に渡来し、9月頃まで観察される。かつては大きな河川である相模川・酒匂川・多摩川の河原や中洲で広く繁殖していたと考えられるが、河川敷がグラウンドなど広く利用されたこと、人や車の立ち入りが増えたこと、ダムの建設で洪水が減り、丸石河原が水に洗われることが少なくなって草が繁茂したことなど、様々な要因のためにコロニーを作れる場所が減り、個体数も減少した。
 繁殖を助ける対策として、相模川では、相模大堰建設による自然への影響の代替策として、中洲の造成が行われている。また、酒匂川では三保ダムの放水によって、コロニーが流される事故が続いたため、日本野鳥の会神奈川支部有志による繁殖用の台地作りの取り組みがされている。これらの試みは、年による変動はあるが、それぞれ成果をあげている。
 多摩川では2001年以降河原での少数の繁殖が記録されるようになった。また、東京湾岸の埋め立て地にコロニーが形成されることがあり、川崎区の浮島地区、横浜市の南本牧地区などでは、行政担当課の配慮によって一時的ではあるが、相当数の繁殖が成功した例がある。2006年には、川崎区の工場跡地にコロニーが作られ、300以上の巣が確認された。
 川や海岸でダイビングによって小魚を捕え、求愛給餌や雛への給餌が良く観察される。コロニーに入った人などに対して糞をかける等の攻撃的行動をとる。
 国際保護鳥。神奈川県では、気象的要因、人的攪乱による繁殖環境の脆弱化、カラスやイタチ等による捕食者による繁殖阻害等があるとして、繁殖期・絶滅危惧Ⅰ類に区分された。

(日本野鳥の会神奈川支部編 神奈川の鳥2001-05より)



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